Story Tellers from the Coming Generation! Interactive fighting novel JOJO-CON
空条 Q太郎さんの「ワンチェン(with生首ディオ)」
vs
かんなさん/言造さんの「ブローノ・ブチャラティ」
| マッチメーカー | :pz@-v2 |
| バトルステージ | :アツい○○ |
| ストーリーモード | :Fantastic Mode |
EPILOGUE FOR THE FUTURE
〜 大いなる始まり 〜
35.黄金体験への鎮魂歌
〜 Gold Experience Requiem 〜
“俺だ。落ち着いて聞いてくれ。例の誘拐犯は『ゾンビ』、黒幕は『吸血鬼』だった。『ザ・ワールド』ってスタンドのな。よく知ってる奴だろ? 首だけで生きていやがった。大丈夫、今度こそ完全に殺した。その代わり、残念ながら、俺はもう帰れなくなった。後の事は、前に言っておいた通り頼む。それと、ずっと自分だけで秘密を背負い込んでたんだろ? 今後どうするかは任せるが、きっと『あいつ』なら乗り越えられるさ。それじゃあ、お別れだ。今まで本当にありがとう。アリーヴェデルチ”
もう20回以上になるだろうか。そのたびに携帯電話は全く同じ音声を繰り返す。留守番電話に吹き込まれた、ブチャラティの「遺言」を。このまま何度聞こうが、バッテリーが切れるだけで、何も変わる事はないのだ。メッセージも、ジョルノの父親も、そしてブチャラティの死も。
フィレンツェの街はまだ大騒ぎだが、この2人の周囲は「痛み」すら感じるほどの静寂が漂っている。
ジョルノはとある建物の屋上の端から外側を向いて立ち、さっきから無言でこのメッセージを繰り返し再生し続けている。その後ろでは、「亀」から半身を乗り出したポルナレフがジョルノの背中を見つめている。
(……オレが間違っていたのか? オレがディオの事をジョルノ、いや、せめてブチャラティにだけでも教えていれば、こんな事にはならなかったのか?)
何故こんな事になってしまったのだろう? ポルナレフは考える。
ジョルノの不調の理由を尋ね、「父親」の話題が出た事に驚いて口を滑らせ、自分が以前からディオを知っている事に気付かれてしまった。いくら不調であっても、ジョルノは下手なごまかしが通じる相手ではない。ポルナレフは覚悟を決め、ジョルノに全てを語った。ディオの正体について、自分達との闘いについて、そしてディオの最期について。
流石のジョルノもショックが大きかったようで、説明が終わってからしばらくは一言も喋らなかった。無理もない。そこまでは予想していた事だ。後はジョルノがこのショックを乗り越えてくれるのを待つだけ……そのはずだった。
その間、重い雰囲気での会話のせいで、携帯電話の振動に気付かなかったのだ……。
そのまましばらくすると、ショックでたたずんでいたジョルノの様子が突然変わった。何か、とてつもなく強烈で不吉な胸騒ぎがするとの事だった。念のため組織に連絡してみようと電話を手に取り、やっと留守電の存在に気付いた。
自分達に訪れた現実を認識するのに少し時間を要した。電話で確認してみてブチャラティの死は理解できた。しかし、その原因が、たった今「自分達が殺した」と説明したばかりの「ジョルノの父親」であるなどと、どうして信じられよう。ましてジョルノは……。
おそらくジョルノの「不吉な胸騒ぎ」や最近の悪夢は、スタンド使いにたまに起きる、血縁者同士の奇妙な共感作用だろう。真実を聞かされた今、ジョルノには「自分の父親が生きていて、今晩本当に死んだ」という事が「感覚」で確信できているのだろう。そして、あるいは自らのスタンド能力で蘇生させたブチャラティの死さえも……。
「ポルナレフさん……」
「あ?」
突然、振り返りもせずにジョルノが言った。もう携帯電話のメッセージは止まっている。
「本人も気にしていたようですが……僕もずっと不思議に思っていたんです…………」
「……何をだ?」
「2年前、何故ブチャラティが蘇生できたのか……ですよ」
そう言われてポルナレフは一瞬眼を見開いたが、声は出さなかった。
「さっきから考えていたんです。僕の父親が本当に『吸血鬼』……他者から『命を吸い取って生きる』存在だというなら…………僕が『命を与える』スタンドを身につけたのは、本当に単なる偶然でしょうか?」
ポルナレフは黙って聞いている。ジョルノがどんな顔で話しているのかは全然わからない。
「僕がその能力によってブチャラティを蘇らせたために、ブチャラティが『ディオ』を倒した…………しかも、本来なら僕が行くはずだった場所でですよ? 何か……とてつもなく大きな、『運命』の力を感じる…………」
ジョルノはポルナレフに背を向けたままで静かに話し続ける。その声は、決して明るくはないが、とりあえず泣き声ではない。
「それで……思うんです。2年前に僕がブチャラティを生き返らせる事ができたのは……上手く言えないんですが、運命が許した『父親の贖罪』の機会だったのではないか……と」
「贖罪?」
「ええ。トリッシュも、ずっと顔さえ知らなかった父親の素性を他人から突然聞かされ、そのまま僕らと一緒にディアボロと闘う事になった。僕の場合も、同じ血を持つ者として、父親という悪を滅ぼす機会を与えられたんじゃあないか……そんな気がするんです」
「そうか……」
血縁というものがどれほど強い運命の「引力」で結ばれているか、空条承太郎達とともにディオと闘ったポルナレフにはよくわかっていた。ディオとジョースター両方の血を引くジョルノにとって、どんな形であれ、ディオとの決着は避けられない宿命だったのだろう。トリッシュはもちろん、ギャングであるジョルノでさえ、「父親の悪事」については何の責任もない。だが、運命とはどんな者でもお構いなしに巻き込んでいくものなのだ。
「ただ……」
「ん?」
「僕はまだいいとして……ブチャラティは僕の父親とは何の関係もないじゃあないですか。それなのに……せっかく助かった命だったというのに、何故こんな事で…………」
言葉の終わりは震えながら消え入った。ずっとポルナレフの側に向いたままの背中が小刻みに揺れている。握り締められたジョルノの拳は背中より若干大きく揺れ、その隙間から赤い雫をこぼしていた。
「あまり深く考えない事だ」
ポルナレフが口を挟んだ。
「少なくともオレが今まで見てきた限り、この2年あまりの間、ブチャラティは自分の信じる道を精一杯生きてきた。ブチャラティの最期の状況はわからない。だが、ディオと闘ったというなら、それは本人の信念による闘いだったはずだ。『運命』や『因縁』という観点からすれば、おまえがいたからディオと出会う事になったのかもしれない。だが、それは関係ないんだ。
彼は自分自身の正義のために邪悪と闘って死んだ。ディアボロを倒した日から今日まで、やり残した事がなかったわけではないだろうが、きっと後悔はしていないさ。留守電の声はそう聞こえたぜ。おまえの能力で生き返ったおかげで、ブチャラティは満足に生き抜く事ができたんだ。だから……わかってやれ……」
ポルナレフの言葉が静かに終わる。単なる慰めではなく、本心からの言葉だった。彼自身もまた、肉親の仇討ちがきっかけで邪悪との闘いに身を投じ、命を落とした身だからこそ言える事なのかもしれない。
それから数分、また無言の時が続いた。そして――ジョルノがポケットからディオの写真を取り出した。
黙ってディオの写真を見つめているジョルノを眺めながらポルナレフは再認識する。ジョルノにとってディオは、今日までずっと顔と名前ぐらいしか知らなかった実父なのだ。それには「悪」である事もブチャラティの仇である事も関係ない。ジョルノにとって今夜が「父親が死んだ夜」である事に変わりはない。
と、ジョルノの注意対象が「ブチャラティの遺言」から「ディオの写真」になっただけで、この場は元の停滞状況に戻った……ように思われたが、変化はあっさり訪れた。
ジョルノの手の中の写真がゆっくりと歪み始めたかと思うと、原型を無視して変形し、そのまま小さな一輪の花へと姿を変えた。
無生物に生命を与えて動植物に変える。スタンド『ゴールド・エクスペリエンス』の能力の基本的な用法である。
それを見て、ポルナレフが言葉を発しようとした瞬間、今まで写真だった「花」からは花弁が落ち始め、次々と夜風の中に呑まれていった。
「お、おい、ジョルノ!?」
慌てて声をかけたポルナレフに対してジョルノは何も答えず、遂に全ての花弁を失った「花」に向けて一言ささやいた。
「アリーヴェデルチ……」
そのまま「花」は夜景に投げ込まれた。
ジョルノの「さよなら」は正確には誰に向けられていたのか、ポルナレフには断定できなかった。
「……さて、ポルナレフさん……そろそろ『亀』の中に戻りましょうか」
先に声を出したのはジョルノだった。その顔はまだポルナレフとは反対側に向けられたままだ。
「あ……ああ、そうだな。それで……おまえはこれからどうする?」
「決まっているじゃあないですか……」
そう言って、ジョルノは振り返った。
「去ってしまった者達から受け継いだものは、生き残った者が更に前へと進めなければならない。2年前と同じですよ。ブチャラティは死んだ。だが、僕達には彼の代わりにやらなければならない事がまだいくらでもある!」
やっとポルナレフの側に向けられたジョルノの顔には、今までの暗い影はもはや微塵も見られない。いつものような、黄金の輝きと気高さが戻っていた。
ポルナレフは確信する。もう心配は要らない。ブチャラティが貫こうとしたものは、ジョルノや仲間達が必ず受け継いでくれる。かつてエジプトへの旅の中で感じた「自分が『白』の中にいるという感覚」と、承太郎達に見た「黄金の魂」。それらは今、ここにも確かに存在しているのだから。
「そうだな、ジョルノ。早く『亀』に入れ。これから今まで以上に忙しくなるぞ」
2003年――「黄金の風」は、止まらない……!
36.天国への階段
〜 Stairway To Heaven 〜
モストロ邸の惨劇から数ヵ月後――アメリカのフロリダ州。
「これでよろしいでしょうか?」
「ええ。そのままでお願いします」
「はい」
「さて……こんなものですね。後は私が自分でやるとしましょう。お疲れ様でした。少し待っていて下さい。お茶でも入れましょう」
「あ、いえ、そんなお構いなく……」
「いえいえ、いいから待っていて下さい」
若い女看守に優しくそう答えると、神父はすぐに礼拝室を出て行った。
数分して神父が飲み物と茶菓子を持って戻ってくると、女看守は作業用に束ねていた長髪を既にほどいていた。白人としても特に白い肌が、波打つ鮮やかなブロンドとともに互いの色彩を際立たせている。
「さ、どうぞ召し上がって下さい」
「ありがとうございます。いただきます」
そう言うと、女看守はゆっくり飲み物を口に運んだ。
「今日はありがとうございました。貴女にもお仕事があるでしょうに、こんな雑用を手伝っていただいて」
「いえいえ、こんな事ぐらいならいつでもお手伝いしますよ。雑用は新入りの勤めですから」
「ハハハ……『新入り』と言うなら、私もこの刑務所に来た日は貴女とほとんど同じ。いわば『同期生』という事になります。あまり気を遣わないで下さい」
「ありがとうございます」
こうして、他愛もない会話が続いた後、2人はどちらからともなく、この会食を終える事にした。
「今日は本当にご苦労様でした。別に仕事でなくても、何かあったら遠慮なく来て下さい。相談でも、ただ愚痴をこぼすだけでも、いつでもお相手しますよ」
「ありがとうございます。あっ、ご馳走様でした。それでは失礼いたします」
「ご機嫌よう、ミューラー看守」
女看守は礼拝所のドアを静かに閉めて出て行った。
(ミュッチャー・ミューラー……あの女看守、使えそうだな)
アメリカのみならず世界各地の教会から声がかかりながらも、エンリコ・プッチは自ら志願してこのグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所の刑務所内教戒師の座に就いた。世間的には「道を踏み外した者にこそ神の教えを伝えたい」だの「権力欲が絡まない所で自分の信仰を深めたい」だのと言っているが、その本心を知る者はいない。
(さて……)
プッチは懐に手を入れると、鍵の付いた正方形のケースを取り出した。
鍵を開けると、そこには入っていたのは何枚か重ねられた『DISC』だった。
プッチは悲しげな瞳で『DISC』を見つめると、その中で一番上にあった1枚を手に取った。数ヶ月前のあの夜、モストロ邸の地下室で回収した『DISC』だ。
(ディオ……)
プッチはまた懐に手を入れると、別のポケットから何か白い物を取り出した。
それは「骨」の欠片だった。
かつてディオが空条承太郎に敗れる少し前、プッチの目の前で自分の体内から取り出したものだ。本来なら信頼と友情の証だったはずの「生前贈与された遺骨」は、結果的に親友の形見となってしまった……。
(ディオ……君の目指したものは、私が必ず……!)
親友ディオを失っても、プッチの『天国』への執着は全く薄れてはいなかった。
プッチ自身、『天国』が具体的にどういうものなのかは知らない。ただ漠然と認識しているのは、それが人を翻弄する絶対的な力である「運命」について何らかの真理を解き明かし得るものだという事だ。だからこそプッチは、『天国』への到達こそ、自分のみならず全人類をも真の幸福に導く事だと確信している。モストロ達も『DISC』を奪って殺したスタンド使い達も、みんなそのために必要な「殉教者」に過ぎない。
ディオ亡き今、プッチが『天国へ行く方法』を知る術は1つしかない。空条承太郎だ。エジプトのディオの館で『天国へ行く方法』の記されたノートを焼き捨てた時、承太郎はノートを読んでいる。そして『ホワイトスネイク』なら承太郎の記憶を『DISC』にして読み取る事ができる! ああ、このスタンドを身に付けた事が神の導きでなくて何であろうか! 記憶のついでに奴の無敵のスタンドを手に入れ、承太郎を始末する! それはディオの復讐でもある!
最終的にディオを殺したのはブチャラティだが、既にブチャラティ自身が死んでいる事もあり、プッチ神父の復讐心は全て承太郎とジョースター一族に向けられていた。故人の仇討ちなど感傷に過ぎないと自覚してはいるが、やはり放っておく気にはならない。それに、ディオの遺志を継ぐ以上、ジョースターとの因縁は逃れられない宿命でもある。ならば計画の障害になるであろう承太郎の抹殺は必要不可欠と言える。それがプッチの判断だった。
なお、プッチは全く気付いていないが、「感傷に過ぎない」と自覚しつつも復讐心に駆られている理由の一旦は他にある。それは彼だけの意思ではない。プッチが『DISC』で記憶を読んだ際、ワンチェンの抱いていた強烈な憎悪がプッチの潜在意識に伝わり、今もなお多少の影響を及ぼしているのだ。
プッチはワンチェンを「小物」「獣同然」「肉人形」程度としか思わず、本人の人格に何の興味も抱いていなかった。だから、ワンチェンの『DISC』を2回も手にしながら、ディオに無関係なワンチェン自身の人生についての記憶は一度として覗かなかった。そのため、「中国」が「中華人民共和国」となる100年以上前から生きていた歴史の証人の貴重な記憶は、誰にも伝わる事はなかった。だが、それでもワンチェンは、主人の遺志と、自らの復讐心だけは、受け継がせる事に成功したのだ。
プッチはワンチェンの『DISC』をテーブル上に置き、ディオの遺骨をポケットに戻すと、ケースから次の『DISC』を取り出した。
その『DISC』の表面には、1人の少女の顔が映っている。「可憐」や「清楚」といった言葉がよく似合う10代半ばの少女は、それを見つめるプッチ神父と同様、哀しみの影を帯びて見える。
(ペルラ……おまえのためにも、私は必ずや『天国』に辿り着いてみせる……神の元から、この兄を見守っていておくれ……)
プッチ神父は目を閉じると、『DISC』の中のペルラ・プッチに向かって小さく十字を切った。ある意味では自分の背負う十字架そのものとも言える、最愛の妹に向かって。
(そして、その時には……)
プッチがまた次の『DISC』を取り出す。表面に浮かんでいるのは端正な顔立ちをした男だった。だが、その瞳には、まるで何も映っていないかのようだ。
(その時には、おまえも救ってやれるかもしれんな。我が弟、ウェザーよ)
そうして、プッチは3枚の『DISC』を元通りケースに戻した。
いつまでも過去を振り返っている時間はない。明日明後日のうちに実行に移せるというような計画ではないが、やるべき事は多いのだ。
承太郎と真っ向から闘うのは危険すぎる。焦りは禁物だ。この刑務所を舞台に、これからじっくり準備を整えよう。
手駒が要る。『天国』の事を教える必要はないが、最低1人か2人、承太郎やジョースター一族と闘う強い意志を持った者が欲しい。ディオの部下の生き残りの中から探すとしよう。後は、この刑務所で手頃な奴を見つけ、『DISC』でスタンド使いにして洗脳すれば良い。いや、この刑務所内に自分と大量の『スタンドDISC』が存在する以上、『引力』によって新たなスタンド使いが集まってくる事も考えられる。そいつらも使える。どちらも、最終的に邪魔になれば始末すればいい。
長丁場の計画になると覚悟した以上、それまでの安全を確保しなければならない。とりあえず、『DISC』の隠し場所が必要だな。どこが良い? 刑務所の敷地内としても、この礼拝堂や監房の中はまずいだろう。となれば庭……沼か倉庫あたりか。番人も要る。毎日四六時中『DISC』を守っていられる者となると、看守や職員では到底無理だ。いっそ人間以外にしてみるか。知性もスタンドも、『DISC』で与えれば済むのだから。
そして……ディオの息子達だ。ジョルノ・ジョバァーナとは結局一度も逢わなかったが、無理に引き入れる必要も、始末する必要もあるまい。ジョルノ以外にも、ちょうどこのアメリカに2〜3人、顔も名前も知らないが、ディオの息子がいるようだ。もし彼らが『引力』に引き寄せられてくるのなら、それも『運命』、その時の事だ。可能なら協力者として迎え、逆の側にいれば始末するだけだ。いや、もし出会う事があれば、きっとそいつは自分を『天国』に押し上げる存在であるだろう。全ては運命。全ては『天国』への階段を上る中での通過点なのだから……。
エンリコ・プッチは迷わない。運命の「答え」を見つけ、『天国』に到達する事こそが、自分の天命だと信じているからだ。
エンリコ・プッチはひるまない。全ての苦難は、全能なる神が、その忠実なしもべである自分に与える試練だと信じているからだ。
そして、エンリコ・プッチは……もう誰にも決して止められない。全ての人類を『天国』へと導くその日まで!
“おまえは………自分が『悪』だと気づいていない…もっともドス黒い『悪』だ…”
最終章.出会い
〜 What a Wonderful World 〜
この部屋は『屋敷幽霊』なんです。
ちがう、ちがう。『幽霊屋敷』じゃあなくて『屋敷幽霊』。『幽霊が住んでる屋敷』じゃあなくて、『屋敷が幽霊』なんだ。壁もピアノもボールもパソコンも、みんな『幽霊』なんだ。『物の幽霊』って言えばわかる?
このグリーン・ドルフィン・ストリート刑務所は1984年に火事が起きて大改築されたんだけど、この部屋はその時に焼け落ちた音楽室の『幽霊』なんです。ぼくは生まれつき幽霊になった道具を使うことができる能力を持っている。
うん、そう、『超能力』。信じられないだろうけど、『幽霊』も『超能力』も実在してるんだ。
……え? どういうこと?
わっ! い……今の、あなたがやったの? あなたもぼくと同じような能力を! すごい……すごいや!
ぼくはこの部屋で囚人の母親から生まれたんだ。それで生まれた時からずっとこの部屋に隠れ住んでる。母さんがいなくなってからはずっと1人。ここにお客さんが来たのも、まともに他の人としゃべるのも、これがはじめてなんだ。
母さん? うん……これだよ……。
だから、これが母さん。母さんの骨……。
この刑務所には、何かとてつもなくおそろしい悪い奴がいて、ぼくらと同じような能力のある人を狙ってるんだ。そいつは相手を眠らせて、その間に体をドロドロに溶かして『心』を抜き取るんだ。何かの『DISC』みたいなものに変えて盗っちゃうんだよ。母さんはそうやって殺された…………。
うん、大丈夫……ありがとう…………。
ん? 『DISC』は『DISC』だよ? 知らない? あ、ほら、この本に出てる。
こういうのって、ぼくが生まれる何年も前からあったはずだけど、もっと昔から刑務所にいるの?
……わからないって、どういう意味?
…………そうなんだ……記憶が……。
待って! もしかしてあなたも『あいつ』にやられたんじゃあない!? そうだよ! きっとそうだよ! だとしたら、『あいつ』を見つければ、昔のことがわかるかもしれない!
あ、そろそろ看守が見回りに来る時間じゃあない? 今日はもう戻った方がいいよ。
また遊びに来てよ。もっといろいろ話したいんだ。それに、ここにはぼくが集めた本がたくさんあるから、忘れちゃってることもまた覚えられるはずだよ。
そう言えば、名前は何ていうの?
……?
う〜ん……たぶん明日も『晴れ』だと思うけど…………えっ!? それが『名前』なの!?
……あ、なんだ。そうか……本名も覚えてないんだもんね…………あ、でも、大丈夫だよ。いつかきっとわかるよ。
じゃあ、また来てね。絶対だよ、『ウェザー・リポート』。
ぼく? あ、ごめんなさい。言ってなかったね。
ぼくの名前はエンポリオです。
*****
| そして、全ての運命は ――ほんの少しだけ予定通りではなかったかもしれないが―― 再び、在るべき流れに戻っていく…… |
END
戦闘結果
ディオ・ブランドー
死亡。ブチャラティの殺害に成功し、結果的に『天国』への野望をプッチに引き継がせた。しかし、本来の目的であるジョルノの肉体奪取以前に、この戦闘での生存自体に失敗。
ワンチェン
死亡(実はこの3人の中で一番長生き)。ディオによるブチャラティ殺害に大きく貢献し、結果的にプッチへの遺志伝達に成功。しかし、大前提であるディオの生命死守に失敗。
ブローノ・ブチャラティ
実は最初に死亡。しかし、邪悪を滅ぼし、部下の仇を討ち、ネアポリスとジョルノを護る事には成功。また、その遺志は仲間達に引き継がれた。
判定
ワンチェンwith生首ディオ(敗北)
ブローノ・ブチャラティ(勝利!)
長らく、本っっっ当〜〜〜〜に長らくお待たせいたしました。
2002年3月に初公開された「2003年のある暑い一夜」の物語は、2006年1月の今ここにやっと終焉を迎えました。
当事は「近未来」だったはずの2003年も今は過去。
思えば世間もジョジョもジョジョ魂も私個人も色々ありました。
皆さんにとってはどんな4年間でしたか?
Q太郎さん、言造さん、本当にご迷惑をおかけしましたが、これでやっと終了です。
いろいろご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
この結末に納得していただけたかわかりませんが、宜しければ感想などお寄せ下さい。
かんなさんも、もしこれをご覧になったら今からでも連絡下さい。
終盤になると両者のやる事が反則じみてた気もしますが、一応それがなくても結果的には同じ勝敗になったと思います。
PLキャラ全滅という結末も含め、納得いかなかった皆様、ごめんなさい。
文章も執筆期間も長すぎたこの闘いですが、見捨てないで読み切って下さった皆様、本当にありがとうございました。
本編の内容や結末についてのあれこれは、後でうら話をご覧下さい。
それではまた。
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対戦ソース
空条 Q太郎さんの「ワンチェン(with生首ディオ)」
かんなさん/言造さんの「ブローノ・ブチャラティ」
この対戦小説は 空条 Q太郎さん、かんなさん、言造さんの対戦ソースをもとにpz@-v2が構成しています。
解釈ミスなどあるかもしれませんがご容赦ください。
空条 Q太郎さん、かんなさん、言造さん及び、ワンチェン、ディオ、ブチャラティにもありがとう!